元鉄道員YouTuberの本を読み終えた感想

数年前から見ている鉄道系YouTuber綿貫渉さんが書いた本を読み終えた。

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僕も大学時代に私鉄で駅員バイトをしたり、契約社員としてJRで働いていたこともあり、綿貫さんとは結構似ている経歴を持っていると勝手に思っている。

もっとも綿貫さんは今やチャンネル登録者数8万人を超える鉄道系YouTuberなので自分と比べるべくもないが。

今回はこの本を読み終えた感想を書いていきたい。

共通点と違うところと両方あった

最後まで読み終えて一番思ったこと、それは同じ駅員という仕事を経験していても同じところと会社によって違うんだなというところがあったことだ。

僕はJR西日本で働いていたのだが綿貫さんはJR東日本(おそらく)ということで同じJRだし、仕事や文化など多少の違いはあっても大体一緒だろうと勝手に思っていた。

しかし、本を読んでいくうちに自分の経験と照らし合わせて違うところが結構あった。

特に大きく違うなと思ったところを2つ紹介したい。

遅刻・寝坊した社員の取り扱いが違う

まず遅刻に関する社内の扱いである。

鉄道会社において遅刻および寝坊というのは大罪だ。

一般企業だったら多少遅刻したところでせいぜい「次から気をつけろよ」と注意される程度だろう。

しかし鉄道会社において遅刻なんてしようものなら大変なことになる。

本にも書かれているのだが泊まり勤務の駅員が寝坊した結果、駅のシャッターが開かず乗客が始発電車に乗れなかったとなれば新聞沙汰になる。

日本の鉄道会社の運行ダイヤは世界一の正確さである。

それを維持するために時間に厳しいのは当然の流れだ。

なので、鉄道会社での遅刻や寝坊というのは一般企業で言うところの「会社の金を着服しました」「会社が潰れても仕方ないレベルの損害をミスで出しました」というくらいの不祥事である。

この表現は決して大げさではない。

実際自分が働いていた当時は時間ギリギリの出勤はNGで、勤務開始1時間前には職場に到着しているように口うるさく言われていた。

制服に着替える時間だったり、自分がいた駅はターミナル駅だったので持ち場までの移動で結構時間を取られるという理由もあるが通勤途中に電車が多少止まったりしても遅刻しないようにというのが主な理由だった。

どんな理由があろうと遅刻や寝坊は絶対に許されなかったのだ。

どんな天変地異があろうと体調が悪化しようと、どんな手段を使ってでも時間通りに出勤しろという世界。

今でもそうなのかはわからないがもし遅刻や寝坊なんてしようものなら、朝礼時にどこの部署で遅刻や寝坊が発生したか公表されていた。

さすがに誰がやったかまでは公表されてなかったが、同じ日に勤務してた人から情報は流れてくるので実質さらし者扱いだ。

うわさでは1回遅刻や寝坊をやらかせば契約社員なら正社員昇格は絶望的になるし、2回以上やらかせば正社員でも退職勧奨されるとのことだった。

それくらい遅刻や寝坊は重罪だったのだ。一般企業で多少遅刻や寝坊したくらいで退職勧奨されることなんてまずないだろう。

ところが綿貫さんのいた職場では遅刻しても車掌登用が1年遅れる程度とのことだった。

1年昇進が遅れるというのは決して軽いことではないが、契約社員の正社員昇進が絶望的になったり正社員ですら退職勧奨されるよりはずっと軽い。

本では綿貫さんが一回遅刻をやらかして上司から怒られる場面が出てくるのだが、読んでて同じJRなのにずいぶん軽いんだなという感想を持った。

退職理由が違った

また鉄道会社とは関係ないが、自分とは退職理由が天と地ほど違った。

仕事と並行して始めたYouTube活動が軌道に乗り(ちなみに上司の許可も得ていたそうで頭が下がる)、両立に悩んだ挙句退職という選択をしたとあった。

そしてあとがきでも書いているのだが、もし動画投稿を辞めることがあればもう一度鉄道会社で働きたいそうである。

つまり綿貫さんにとっては鉄道会社での仕事というのは、それほど悪いものではなかったということなのだろう。

本を読み進めていても上司や同僚とうまくやっている様子が伝わってきたし、実にうらやましい限りである。

僕の場合は全く違った。

退職理由や職場への不満が多すぎて、これ以上働き続けたところで自分にとってメリットが一つもない、それどころか悪くなる一方だというところまで追い詰められた挙句退職することになった。

上司や同僚、同期といった人間関係もお世辞にも恵まれたとは言えなかった。

ちなみに在職中、一度も遅刻や寝坊はしなかったし自分で言うのもなんだがそつなく日々仕事はこなしてたと思う。

JRを退職してからもうかなりの時間が経っているが、駅員時代の辛かった思い出とか経験など昨日のことのように思い出される。正直辞めて正解だった。

僕以外にも僕より先に職場や仕事に不満を持って退職する人たちは数多かった。

前職にもう一度戻る人もかなり多かった。

僕はもう一回鉄道会社で働きたいか?と聞かれたら何のためらいもなくNo!と答える。

鉄道自体は好きだし趣味としての鉄道は一生楽しんでいきたい。

だが勤めていた鉄道会社自体は今後も絶対許すことはないし、仕事としては二度と関わりたくない。

会社を退職するというのは表向きはプラスな理由でも、結局みんなネガティブな理由で辞めているんだろうと思っていたので「機会があればまた働きたい」という記述を読んでかなり驚いた。

ホントに前向きな理由で会社を辞める人がいるんだなと世の中の広さを思い知った次第だ。

他にも細かい違いがあったがそこに関しては本を読んでほしいと思う。

身近な交通機関なのに知られていない世界

本でも書かれているが、日本において鉄道はこれほどに身近な交通機関であるにもかかわらず鉄道会社側の考えと世の中の人の考えに相当な開きがある。

言い換えれば鉄道に対する無知や誤解があまりにも多すぎる。これは自分も大きく同意せざるを得ない。

僕が鉄道会社で昔働いていた話をするとほぼ全員「運転士?」と聞いてくるし(鉄道会社には運転士しかいないと思っているのだろうか)、仕事は暇で楽かつ高給取りだと思われているようでどれだけ鉄道に対して無知なんだと思うことがよくある。

それゆえに鉄道会社は乗客に対して、乗客は鉄道会社に対して不満を持つ。

それが少しでも解消されたら、鉄道に興味を持ってくれたらという目的で本を出したとのこと。

多少僕が経験したこととは違うが、もし自分の周りで鉄道会社の仕事ってどんなの?とか聞かれたらこの本を渡すだろう。

よくぞここまでまとめてくれたと思う。

もし鉄道会社に対して何か不満や疑問を持つようなことがあったらこの本を読んでほしい。

少しは鉄道会社に対して寛容になれるのではないだろうか。

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